こんにちは、社会人10年目から看護学生になった一児の母natsuです。
看護系小論文対策の第三弾として、ここでは人工妊娠中絶についてまとめていきます。
個々の価値観や倫理観について問うことができるテーマであるため、小論文でも出題頻度の高い内容です。チェックしていきましょう!
人工妊娠中絶とは
日本における人工妊娠中絶の定義と議論点
日本においては、人工妊娠中絶について母体保護法で定められています。
人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
母体保護法 第1章 第2条 2
また、人工妊娠中絶は下記に該当する場合に行うことができるとされています。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
母体保護法 第3章 第14条
二 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
日本においては、暴力や脅迫によって姦淫された場合だけでなく、妊娠・出産することによって身体的・経済的な問題が懸念される場合も、母体の生命健康の保護のために人工妊娠中絶を行うことができます。
これは妊娠した女性に認められた「選択権」と捉えることができるよ。
また、母体保護法でいう「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期」とは、妊娠22週未満のことを指します。
現在は医療が発達し、妊娠22週以上で生まれてきた子どもは母体外でも自力で生きていくことができる力を備えているとされるため、人工妊娠中絶の適用になりません。
言い換えれば、妊娠22週未満で生まれる子どもは自力で生きていく力を備えていないことを理由にして、人工的に妊娠を中断することを可能としているのが法律上の解釈です。
この解釈には当然、批判的な意見もあるけれど、現時点での法律上の解釈は上記のようになっているよ。
人工妊娠中絶の種類と母体への影響
また、医療者としては、人工妊娠中絶の日本における法律上の解釈や議論についてだけでなく、行われている手術や母体への影響についても知っておくとよいでしょう。
現在(2023年2月時点)、日本で認めている人工妊娠中絶術は「手術」のみで、経口薬である「中絶薬」は認められていません。
人工妊娠中絶には妊娠12週未満で行う「初期中絶」と、妊娠12週〜22週未満で行う「中期中絶」があり、手術の方法が大きく異なります。それによって体への負担も異なり、初期の段階で手術を行う方が負担が少なくなっています。
妊娠12週がどれくらいの時期かというと、週数は最終月経から数えはじめるので、本来の生理予定日がおおむね妊娠4週にあたります。
そこから妊娠12週までには、2ヶ月弱が残されているということになります。
すなわち、初期中絶を受けるには「あれ、そろそろ生理のはずだけどな」と思いはじめる時期から2ヶ月弱しか時間がないということです。
医療者としては、正確な情報提供をして決断の材料を提供したり、決断をサポートする支援が必要になると思うな。
「法律上の解釈」と「道徳的な解釈」は異なる
ここまでは法律上の人工妊娠中絶の定義や、法律的に人工妊娠中絶が認められている理由について触れてきましたが、「法律上の解釈」と「道徳的な解釈」は異なります。
日本の法律でこのように解釈されているからといって、日本人はみんな同じような感性で考えるとは限りません。
小論文では、あなた自身の感性についてや、もしくは個々の感性の違い(人工妊娠中絶に対する意見の違い)に対してどう向き合っているかを問われる場合もあります。
自分が人工妊娠中絶についてどう考えるか、いちど深ぼって考えておくと、試験当日に自分の考えをまとめやすくなります。
ただし、もし自分が看護師になった場合は、法律に基づいて医療を行なっていく立場になるということは忘れずに、その上で自分なりに人工妊娠中絶と向き合ってみてください。
でも小さな生命の犠牲のうえで成り立つ選択肢であることもしっかりと受け止めなければならないと思う。予期しない妊娠から女性を守る方法は人工妊娠中絶以外にも、避妊具の使用や緊急避妊薬などの選択肢があるから、それらを女性たちが適切に選べるように、学校教育に取り入れることなんかもあわせて行なっていく必要があるんじゃないかな。(※natsuの個人的な考え)
人工妊娠中絶に関する国内外のトピックス
ここからは、国内外のトピックスについてまとめていきます。
ご自身の人工妊娠中絶への考え方のヒントになったり、小論文執筆のネタになるかもしれませんので、国内外でどのような議論がされているのか、チェックしていきましょう。
アメリカにおける人工妊娠中絶の権利に関する議論
アメリカでは長くの間「人工妊娠中絶は、憲法で女性に認められた権利」とされていましたが、2022年6月に連邦最高裁判所がそれを覆す判断をしました。
これにより、アメリカでは人工妊娠中絶が認められるかどうかは州ごとの判断となりました。
人工妊娠中絶はアメリカの世論を二分する大きな問題で、現在では中絶が認められている州と認められていない州が混在している状態になっています。
デモの現場を取材するたび、「中絶は女性の権利だ」「自分の体のことは自分で決められるべき」という中絶擁護派と、「命は受精の瞬間から命」「中絶は殺人」という中絶反対派が、激しく言い争う場面を目の当たりにします。
「アメリカで中絶巡り何が起きている?連邦最高裁の判断とは?」NKH国際ニュースナビ
日本における、「中絶薬」の承認に関するトピック
現在、日本では人工妊娠中絶を飲み薬によって行う「中絶薬」の使用は認められていません。
しかし、2023年1月に、厚生労働省において中絶薬である「メフィーゴパック」の承認が了承されました。この薬が承認されれば、日本で初めて飲み薬の中絶薬の使用が認められることになります。
中絶薬は手術による人工妊娠中絶よりも女性への負担が軽いとされており、日本の女性は新たな選択肢を得ることになります。
ですが、副作用もありますので、全く負担がないというわけではありません。その点は女性が正しく理解をして選択していく必要があります。
日本においては中絶薬の使用経験が少ないことから、最初のうちは、入院できる設備のある病院でのみの使用から始めていくことを検討しています。
また、認められた医師のみが使用できるように、しっかりとした管理がされる予定です。
その他にも、厚生労働省はパブリックコメントを募集して再度議論することにしています。
本剤については社会的関心が極めて高いことから、パブリックコメント手続きを行った後、上位組織である薬事分科会において再度議論することとされております。
『「メフィーゴパック」の医薬品製造販売承認等に関する御意見の募集について』厚生労働省
中絶薬が認められていない現段階でも、中絶薬を個人輸入して使用してしまう例があり、危険だからやめるように厚生労働省が注意喚起しているよ。
女性に認められた選択肢だけど、定められた条件のもと、正しく理解して正しく選択することが必要じゃないかな。情報提供の重要性が高まりそうだね。
まとめ
今回は、人工妊娠中絶についてまとめていきました。
国内外で大きな変化が起こっているトピックでもあるので、新しい情報も知識としてチェックしながら、ご自身の意見や医療者として取り組むべき観点について、考えをまとめていきましょう。
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