【看護系小論文対策】介護保険、高齢者福祉について

わが国では、高齢者を支えるために介護保険制度や高齢者福祉が用意されています。その制度を知ることで、看護師になった際に接する高齢者の方々がどのような制度・福祉を活用して医療現場とつながっているのかイメージし、小論文に厚みをもたせましょう!

 
natsu
例えば訪問看護師が接している患者さんたちは、介護保険制度を利用してサービスを受けている人がほとんどだよ。そのしくみを理解しよう!

介護保険制度のしくみ

介護保険制度の概要

介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者や特定疾病を持つ人を社会で支える仕組みです。40歳以上の人に加入義務があり保険料の支払いが開始します。

介護が必要になる(自分の生活を自立して行えなくなる)と、他の人の手助けが必要だったり、家で生活できなくなった場合は施設に入居する必要があったりと、労力やお金がかかります。
介護保険制度は、集めた保険料+国の経費を使って、介護が必要になった人が1〜3割の自己負担額で様々な介護サービスを受けられるように給付を行なうものです。

要介護認定、要支援認定とは

65歳以上の高齢者は、「介護(支援)が必要である」と判断された場合、要介護認定および要支援認定を受けることになります。

要介護認定とは、寝たきりや認知症等で介護が必要な状態の認定であり、「介護給付」を受けることができるようになります。
また要支援認定とは、介護が必要なほどではありませんが日常生活に支援が必要な状態の認定で、「予防給付」を受けることができるようになります。

実際に受けられる介護給付・予防給付

それでは、要介護・要支援と認定された人はどのようなサービスを受けることができるのでしょうか。

出典:厚生労働省「介護保険制度について」

介護保険を利用して受けられるサービスには、ホームヘルパーや看護師に自宅へ訪問してもらい生活支援や訪問看護を受けるものから、日帰りで施設に通ってリハビリを受けるもの、短期間施設へ宿泊するもの、看取りの日まで施設に入居するものなど、幅広い種類があります。

いずれも認定を受けた要介護度に合わせて必要なサービスを受けていくことになります。
ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員と相談しながら、どのようなサービスが必要なのかプランを作成します。

これらのサービスを1割〜3割の自己負担で受けることができるのが介護保険制度です。

 
natsu
こんなに色々なサービスを社会保障で受けられるなら、介護が必要になっても安心だね?

介護保険制度の課題

上記のような充実した介護保険制度ですが、どのような課題があるでしょうか。

介護保険制度の現状

まずは、現状の介護保険制度をとりまく状況について確認していきましょう。

  • 高齢化率は年々上昇している
  • 認知症の高齢者が増加している
  • 高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯が増加している

高齢化率は年々上昇している

わが国はすでに超高齢化社会に突入していますが、2025年まで高齢者の増加が続く見込みです。さらにそれ以降は働き手となる若い世代が急減するため、社会で高齢者を支える負担が増えていきます。

出典:厚生労働省「総人口・将来推計人口・構成割合」より作成

 
natsu
介護保険に必要な費用が増えて、その費用を支払う人が減るので社会保障としての負担が大きくなるということだね。
また、介護を必要とする人の数は増えるのに介護を担う若い世代の働き手が減っていく、という労働人口の問題としても捉えることができるね。

認知症の高齢者が増加している

高齢者のなかでも、認知症を有する人の割合が増加しており、今後も継続して増加する見込みです。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

 
natsu
認知症は介護が必要になる主な理由の一つであり、介護負担が大きな疾患でもあるね

高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯が増加している

核家族化の進行により、高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯が増加しています。

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」より作成

 
natsu
高齢者が単独や夫婦のみの世帯だと、介護が必要になった時に家族の助けを得るのが難しく、介護サービスの必要性が高まるね

介護保険制度の現状のまとめ

上記のことから、今後も「介護サービスが必要な人が増加していく」こと、また今後さらに「介護の負担を支える財源や人手の確保が困難になっていく」ことが考えられます。

認知症については介護の面だけでなく様々な面から取り組みが必要とされており、「認知症施策推進大綱」という名前で政策が進められています。こちらはいずれ別記事で解説したいと考えています。

介護保険制度の課題と対策

では、上記の現状から、どのような課題がうまれているのでしょうか。また、それに対する対策をみていきましょう。

  • 介護を必要とする人の増加
  • 介護費用の増加
  • 介護の担い手の確保

介護を必要とする人の増加

今後も高齢者が増加していくこと、また認知症や核家族化によって家族だけで介護することが困難な人が増えていくことから、介護サービスを必要とする人が増加していく見込みです。
限られたリソースを適切に割り振るためには、本当に介護を必要している人に手厚い介護サービスを提供し、介護度が低い人にはできるだけ自立を促す必要があります。

介護を必要とする人の増加:対策1 要介護度の高い人を優先する

対策のひとつめとしては、利用希望者が多い介護サービスは要介護度の高い人が優先的にサービスを受けられるようにすることが挙げられます。
例えば「特別養護老人ホーム」は自宅での生活が困難な人が看取りの日まで生活できる施設系サービスですが、入居希望者が多く、入居までに長い期間順番待ちが必要です。そこで2015年からは原則要介護度3以上の人のみが入居できることとなりました。このように対象者を絞ることで、本当に介護が必要な人が介護サービスを受けやすくなります。

 
natsu
一方で、以前までは入居できていた要介護度1〜2の人が入居できなくなってしまったり、要介護度3以上でも入居までに長い期間順番待ちが必要という状況は今も変わっていないなど、課題は残っているよ。

「特別養護老人ホーム」に入居できない場合は、代替えの方法として民間の「老人ホーム」を利用するというものがあります。公的な施設である「特別養護老人ホーム」よりも幅広いサービスを提供していたり、要介護度の低い人向けの施設などもあります。
一方で、費用のほとんどを介護保険でまかなえる「特別養護老人ホーム」と異なり、入居時に多額の入居一時金(たとえば一千万円など)が必要であったり、また介護を提供していない老人ホームもあるため介護が必要になったら退去しなければならないケースもあるなど、新たな問題点が考えられます。

 
natsu
やっぱり介護が必要な人が多くなると、全ての人が希望通りのサービスを受けられるというわけでは、なくなってしまうね。
介護を必要とする人の増加:対策2 介護予防

そこで、新たに介護が必要になってしまう人を減らしたり、もしくは今よりも自立した生活ができるようになるための訓練を提供する「介護予防」も対策として行われています。

介護保険の範囲内では、要支援と認定された人が受けられる「予防給付」があります。
例えば「通所リハビリテーション(デイケア)」では、食事や入浴などの生活支援の提供とともに、筋力トレーニングや口腔ケアを提供して高齢者の介護予防を行なっています。
またそのような場に参加することは、高齢者にとって自宅への「閉じこもり」の予防となり、社会への参加が継続されて自立した生活を続けようという意欲を高めることも期待されます。

民間の活動では、「通いの場」の取り組みがあります。高齢者向けに体操をする集まりや、趣味やお茶会の集まりなどを開催し、そこに参加することで自宅への「閉じこもり」を予防します。
集まりに参加するために徒歩で移動することも介護予防になりますし、集まりで友人ができれば社会とのつながりができ、生活がいきいきとしたものになります。

 
natsu
自治体の保健師が「通いの場」に関わる仕事をすることもあるよ。看護師の仕事とも密接だね。

介護費用の増加

介護費用は年々増加しています。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

社会保障制度の維持のため、それまで介護保険の自己負担額は1〜2割でしたが、現役並み所得のある人は自己負担額が3割に変更されました。

サービス利用者の自己負担額を増加させることは、制度を長期間持続可能にするための直接的な解決策です。
しかしそれだけでなく、上の項目で解説したようにそもそも介護が必要になってしまう人を減らすことでも介護費用の減少につながるなど、他の取り組みとも連動している複合的な課題であると考えられます。

 
natsu
小論文では、単に利用者に負担を求めること以外にも、いくつか解決策が挙げられるといいよね

介護の担い手の確保

今後わが国で予測されている、「高齢者の増加」と「生産人口の減少」は、介護に従事する働き手の減少を示すものでもあります。介護の担い手の確保が必要です。

介護職の魅力を高めて人材を集めるだけでなく、少ない労働力で効率的に介護を行うための技術導入も取り組まれています。

介護の担い手の確保:対策1 介護職の待遇改善

介護に従事する働き手を確保するためには、介護職の仕事としての魅力を高めて人材を集める方法があります。

 
natsu
2021年11月に岸田総理が看護・保育・介護職の賃金アップを明言したことがニュースになったね

2022年2月〜9月にかけ、「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」が交付されました。これは職員の給与のベースアップに使用されることを条件に、介護サービス事業所等に補助金が交付されるものです。
職員の収入を約3%(月額9000円)アップさせることを目的としています。

介護の担い手の確保:対策2 ロボット・IT・ICTの導入

より少ない人員でも介護を提供できるように、技術を導入して業務効率を高めるという方法も、働き手の減少への対策のひとつです。

居室内で利用者がベッドから離れたことを感知する「見守りセンサー」や、介護ロボットなどの導入が進められています。また、事業主がそれらの技術を導入する場合には、都道府県から補助金を受け取ることもできます。

 
natsu
でも実際に介護サービスの利用者にそれらのテクノロジーが受け入れられるかどうかは、今後も課題のひとつとして検討されているよ。
ロボットからの介護よりも、人からの介護を受けたいという利用者もいるだろうね。

まとめ

ここでは介護保険制度と高齢者福祉についての概要と、課題・対策をまとめました。

少子高齢化という日本が直面している大きな課題とも連動しているテーマなので、知識として持っていると小論文のネタとして役立つと思います。

他にも看護系時事問題の解説記事を書いているので、よかったらそちらも読んでみてくださいね。

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