【看護系小論文対策】高齢化社会について

日本は超高齢化社会を迎えているという話はよく耳にすると思いますが、それでは社会が高齢化していくと医療・福祉の観点ではどのようなことが起こるのでしょうか? まとめて見ていきましょう!

 
natsu
高齢化社会をあつかったテーマはよく出題されるので、確認しておこう!

高齢化社会に関する現状

人口構造の推移

日本は超高齢化社会(高齢者の割合が人口の21%を超えている状態)です。高齢者割合は今後も増加し続けることが予測されています。また、人口構造は2025年までは「高齢者の急増」、それ以降は「現役世代の急減」に局面が変化していきます。これは2025年問題とも呼ばれています。

出典:総人口・将来推計人口・構成割合(厚生労働省)より作成

高齢化社会における課題

このような人口構造の変化によって、たとえば下記のような課題がうまれてきます。

  • 高齢者が住みやすく、いきいきと生活できる地域づくり
  • 医療費や介護給付費の増加への対策
  • 医療・福祉サービスでの働き手の確保やより少ない人員で業務を行う必要がでてくる

それでは、これらの課題にたいしてわが国が取り組んでいる対策はどのようなものか、見ていきましょう!

課題をうけた取り組み

高齢者が住みやすくいきいきと生活できる地域づくり

地域づくりの取り組みとしては下記のような例が挙げられます。

  • 地域包括ケアシステム
  • 通いの場づくり

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムは、2025年までを目標に、高齢になっても住み慣れた地域で生活を続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に受けられる体制を構築する取り組みです。

出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

医療や介護のサービスを受けるために遠くへ行ったり転居したりすることがないよう、必要な社会資源が地域に整っている状態を作ることが目的です。

 
natsu
高齢者の急増に備えて、高齢者がさまざまなサービスを受けやすい環境を整えておくということだね。

各地域での相談役としてケアマネジャーがいます。ケアマネジャーは介護サービスなどが必要となった方に対し、一人ひとりの状況にあわせてどのようなサービスを受けるかコーディネートします。「助けが必要だがどうすればよいかわからない」という方のための相談役になってくれます。

通いの場づくり

通いの場は、民間主体で行われる高齢者の集いです。体操をしたり、ボランティアをしたりなど、さまざまな目的をもって活動をしており、そこに地域の高齢者が参加することで通いの場となります。

高齢者は仕事や育児などの社会的役割を終えた方が多いため、通いの場を作ることは社会とのつながりを保ったり、日々の楽しみを作ったりと生活を彩る役割があります。また、外出を促したり体を動かす活動をしたりすることで、身体機能の低下を防ぎ介護予防の役割も果たしています。

医療費・介護給付費の増加への対策

医療費・介護給付費の増加への対策としては下記が挙げられます。

  • 健康寿命の延伸
  • 窓口負担割合の見直し

健康寿命の延伸

医療費や介護給付費を減らすためには、高齢者の健康を促進し、医療や介護が必要ない期間を伸ばすことが重要です。

上記の項目でご紹介した「通いの場づくり」は高齢者に社会での居場所を提供する役割とともに、健康増進の役割も果たしています。家にこもりきりになると精神的にも身体的にも活動性が低下し健康を損ねるきっかけとなってしまうので、その予防も目的になっているのですね。
ちなみに厚生労働省の「介護予防マニュアル」では、介護予防事業対象者の基準において、「週に1回以上外出しているか」を閉じこもりの質問項目として設定しています。

また、2000年から開始した介護保険制度では、2005年に介護予防に重点をおいた改正があり、「要介護者への介護給付」だけでなく「要支援者への介護予防給付」が新設されました。
これにより、要支援者は筋力トレーニングや口腔ケアなどのサービスを給付を受けながら利用することができます。サービスの提供方法も、訪問型や施設型(通所や短期入所)など利用者のニーズに合わせた様々な形があります。

 
natsu
要支援者として認定されていなければ、このようなサービスは受けられないよ。現段階で認定を受けていない高齢者の介護予防は、上記の通いの場をはじめとした民間主体の活動がメインになりそうだね。

窓口負担割合の見直し

社会保障費を軽減するシンプルな方法として、窓口負担割合の見直しがあります。すでに超高齢化社会へと突入し、今後さらに高齢者の増加・現役世代の減少が予測されているわが国において、現行どおりの社会保障制度を維持することは難しくなっています。

後期高齢者医療制度の窓口負担割合が令和4年10月から改訂になり、一定以上所得のある方は窓口負担が2割に変更になっています。これについて厚生労働省は、高齢化社会が進展するなか、現役世代の負担上昇を抑えながら全ての世代の方々が安心できる社会保障制度の構築が重要である、と説明しています。

出典:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」

医療・福祉サービスでの働き手の確保、生産性の向上

2025年以降、現役世代の急減が予測されているわが国ですが、医療・福祉には現在よりも多くの働き手が必要になることが見込まれています。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

そこで必要になってくるのが、医療・福祉サービスに関する業務の働き手確保と、より少ない人員でも業務を行うための生産性の向上です。

  • 多様な就労の促進
  • 介護人材の確保
  • テクノロジーを活用した生産性の向上

多様な就労の促進

これは医療・福祉の領域のみに限ったことではありませんが、わが国全体における生産人口の急減に対する政策です。70歳までの就労機会の提供や、中途採用・副業・兼業の促進により、就労の多様化をはかることで生産人口の拡大を目指すものです。介護現場においても、元気な高齢者を介護者として雇用するなどの取り組みが行われています。

介護人材の確保

医療・福祉の領域においては、特に介護人材の確保が課題とされています。介護人材の確保のため、職員の処遇の改善や、高齢者・外国人を含む多様な人材の登用、介護職の魅力向上のための情報発信などが取り組まれています。

テクノロジーを活用した生産性の向上

より少ない人員で生産性を向上するために、テクノロジーの活用が検討されています。介護ロボットの導入で介護負担を軽減したり、見守りセンサーの導入で高齢者の離床や転倒を感知したりといったものが例として挙げられます。

ただし、介護現場へテクノロジーを普及していくためには、介護現場の理解を得て、効果的な技術導入を促進することが課題であると厚生労働省は説明しています。

 
natsu
ロボットによる介護を受けることに冷たく怖い印象をもったり、センサーの設置に対して監視されている印象を受けたりする場合があるかもね。利用者は高齢者であることが多いから、テクノロジーが受け入れられるかどうかは検討が必要だね。

まとめ

ここまで、わが国の高齢化社会の現在と今後、また高齢化社会をめぐる課題と取り組みについて解説しました。小論文執筆のアイディアや足掛かりになっていれば嬉しいです。「そういえばこんな考え方もあったな!」みたいなストックが1つでも多いほど、試験当日の論述の材料が増えますよ。

今回はおおまかな概説という位置付けになるので、個々の項目についてより深掘りして解説する記事も書いていきたいなと思っています。

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